五等分の花嫁-裏テーマ①「夢は悪夢か?」

・五等分の花嫁は、夢で始まり夢で終わる

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一巻。結婚式場で居眠りをしてしまう風太郎の夢から始まる。

五つ子との出会いは、夢のような日、あるいはとんでもない悪夢として描写される。

最終巻。結婚式の場で、夢から目覚める。ミサンガが切れる。

未来の出来事が夢であったかのように学生時代の風太郎が目覚める。

 

つまり五等分の花嫁全体のテーマは夢とその実現である。

・幼少期の風太

「自分は誰からも必要とされない人間だ」と感じていた。修学旅行先の京都で四葉に出会い、「誰かから必要とされる人間になる」ことを夢にもち、そのために何か誇れるものが欲しいと勉強に打ち込み始める。さらにこれには、経済的に豊かになり、妹らいはの夢なら「なんでも叶えてやりたい」という動機がある。

・幼少期の四葉

母を楽にさせるため、「誰かから必要とされる人間」になる夢を風太郎と共有するが、同時に姉妹の中で見分けてもらえないことに危機感を感じる。「見分けてもらう」ことを夢にし、リボンを身につける。

・現在の風太

最初、お金のためであると割り切っていた家庭教師業から、「誰かに必要とされる」ことを達成し始め、最終的に「五つ子に夢を持ってもらうこと」を目標にするまでに成長する。

・現在の五つ子

一花は女優になるが、「誰かに見てもらいたい」という動機がある。

二乃は姉妹と一緒に調理師になるが、「いつか離れていくと分かっていても、それでも一緒にいる」という動機がある。

三玖は調理師になるが、「我慢しない」という動機がある。

四葉に関しては先述。夢は花嫁あるいは人のサポートをする仕事であり、「見分けてもらう」「誰かに必要とされる」ことに対応する。

五月は先生になるが、「母親に憧れ志す」という動機がある。

・その他の人物

風太郎の妹らいは:直接的に夢が語られることはないが、風太郎が経済的に豊かになろうとするのは妹の夢ならなんでも叶えてやれるようになるためである。

風太郎の母:そもそも風太郎の家が経済的に貧しいのは、風太郎の母が開業した喫茶店が、風太郎の母の病気により閉店したからである。これにより風太郎は、夢に対する疑念を持ち努力を否定する態度を取る(幼少期、かつての父と同じ"アウトロー"。)。

 

風太郎の母の店

これは、叶えられなかった夢を表す。叶わなかった夢は、先生(=風太郎)を通して二乃、三玖へ引き継がれる。

 

・五つ子の母

五つ子の母、零奈がかなえることができなかった夢は、2点に集約される:

1.先生になったことを後悔してしまったこと、2.父親を与えられなかったこと。叶わなかった夢は、先生(=風太郎)を通してそれぞれ五月、五つ子の養父(マルオ)に引き継がれる。

1.五月は、先生になるという夢を、実父に単に母親に憧れているだけなのではないかと指摘される。しかし、風太郎に「勉強を教えてもらう」(=自立のための訓練を受ける)ことにより、実父の呪縛から解き放たれる。「きっと後悔することはないでしょう」という発言。

2.養父マルオは、自分の父親としての役割を自覚できない。「君に父親と呼ばれる筋合いはない」のは、自覚のないことを表す。風太郎は、「自分が父親になる」ことで、「少しは親らしいことをする」ことを問題提起する。自分の実力、あるいは正しさを全国模試によって示し、マルオは、父親としての役割を果たす(学園祭後半)。

 

・ミサンガ

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ミサンガが切れるのは夢が叶った時である。

こちらの考察でもあるとおり、右手のミサンガは1)恋愛、左手のミサンガは2)勉強の願い事を意味する。結婚式のシーンで、ミサンガは相当痛んでおり、切れたと考えられる。

結婚式のシーンで1)自身が必要とし必要とされる花嫁と結ばれたこと、2)五つ子全員が全員夢を持って卒業することの条件が解決された=夢が叶ったことを示す。

 

・「とんでもない悪夢だ」とは何か

作中で風太郎が表明していたことは2点ある。1点目は中間試験の際にカンニングペーパーに留めた別れのセリフ、「地獄の激務から解放されてせいせいする...でもそこそこ楽しい地獄だった」という発言。2点は修学旅行のラストシーン、「ほろ苦い思い出さえ幸福に感じるのもきっとみんながいたから」という発言。以上により、自身の青春時代を振り返り夢のよう=悪夢のよう=幸福を感じることができた楽しい地獄という図式が成り立つ。

 

・後書き

まとめると簡単な話なのだがかなりの時間がかかってしまった。読みが浅い点は反省点である。もっと内容に踏み込むことと簡単に解説することに気をつけたい

 

2(裏テーマ②:先生と生徒の関係は罪か)に続く。